冷眼観人
冷耳聴語
冷情当感
冷心思理
菜根譚 前集二〇三
訳は、「冷静な目で人間を観察し、冷静な耳で人の話を聞き、冷静な感情で事物に触れて感じ、冷静な心で道理を考える。」となります。
要するに、
常に冷静に対処せよ
ということです。
これは、ビジネスでもわれわれ歯科医の世界においても大切なことと言えます。
「冷静な感情で事物に触れて感じ」
というところは特にです。
歯学がすごい勢いで進歩し、情報があふれかえっている現在、学ぶべき学問、師や本に出会い、臨床において忠実に反映させていても、
「あれっ?これってどうなんだっけ?」
と思うことは多々あります。
そのような時に、「冷静な感情で事物に触れて感じ」て自分の頭で判断する癖がついていると、現在も様々なグレイゾーンが存在する、いや、
グレイゾーンだらけ
だということがわかります。
例えば、抜歯即時インプラント埋入治療において、丁寧な抜歯と確実な不良肉芽の掻把が重要であることは皆さんご存知の通りですが、唇側(頬側)骨板が完全に飛んでなくなっている場合、その部位の歯肉はどの程度掻把すればよいのか。
血餅の保持が非常に重要なので、縦切開などはもってのほかであるし、ほんの少しでも歯肉に穴が開かないように努力しなければなりません。
しかし、あまりにおとなしく掻把していると、明らかに感染しているとわかる組織を残すことになります。
「それはケースバイケース。その時、その治療を行っている歯科医が自分で判断をしなければ!」
それはそうなのですが、判断が難しいグレイゾーンの中で、自分で判断する基準がほしいのです。
このような時に役に立つのが、人まねではなく、あるいは人まねでもいいので、
常に一生懸命考えて診療を行う
ということです。
歯槽頂アプローチテクニックを応用したインプラント埋入手術において、仮に既存骨の垂直量が卵のカラのような状態でも予知性の高い手術が可能であることは、もうコンセンサスが得られています。
ただ、このようなケースで難しいのは、安全なインプラント埋入手術ではなく、安全な2次手術、もっと言えば、
安全な2次手術が可能な時期決定
であるということは、ほとんど言及されていないというのが実情です。
「ペリオテストや他の動揺度テストで数値的に把握できるではないか。」
と言われそうですね。
そう、ヒーリングアバットメントが装着できればそれが可能です。
私が書いているのは、そのヒーリングアバットメントをねじ込むことができる、インプラント本体をねじることができる時期は、本に載っていないということです。
そのようなことをいつも考え、6,7年前から講演会やシンポジウム等で発表した内容のごく一部が以下の写真です。
誰も教えてくれないので、冷静な目で自分の臨床を見つめて出した結論でした。
これは現在でも、私にとって重要な判断基準となっています。
次に30代中ばに行っていた歯内治療に関する講演スライドの一枚を見てください。
様々なツールは発達したものの、根管下部をどの大きさで拡大したらよいかというのは、本当にあいまいです。
まさに
グレイゾーン
根管形成時のおもな失敗原因に
・根管の見落とし
・側方への拡大不足
・根尖部のトランスポーテーション
であることを考慮すると、本当に重要なことについての基準さえあいまいなままであることがわかります。
「根尖性歯周組織炎が、主に根管系に継続して棲息する微生物からの刺激によって引き起こされるバイオフィルム病」
であり
「根管の無菌化など不可能な夢」
であることを考慮すれば、当分グレイゾーンのままなのかもしれないですが・・・
歯科にとって最も重要なことの一つの『 咬合 』も、私が力を入れている分野の 『 顎顔面口腔育成治療 』についても、とにかくグレイゾーンだらけ!!
John Mew先生 がおっしゃいました。
「事実を追いなさい。
真実とはそう簡単に到達するものではない。
真実は実に深遠なものだよ。」
引用されるエビデンス自体が “ 真実 ” でなければ、正しいと信じていることも怪しくなってきます。
机上の勉強ももちろん重要ですが、冷静な目でしっかり観察し、特にグレイゾーンについては常に考えた仕事を行うことが道を誤らない、患者さんに迷惑をかけないコツだと考えています。
連休最終日に少し時間がとれたので、長々としたブログを書いてしまいました。
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