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歯科治療の中の宗教

Posted by Suetake 2011年4月17日

鹿児島大学歯学部を卒業してから現在までたいへん幸運な歯科医人生であったということを常々感じています。多くの歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士、歯科助手、ディーラーに出会い、その都度歯科医としてステップアップできました。また勉強・研鑽のやり方もおおかた間違っていなかったと思います。大学卒業時になぜそう思ったのか今でも思い出せませんが、「自分は義歯が得意だ」と錯覚していて、さらにそれを伸ばしていきたいと、参加する研修会のほとんどが「総義歯セミナー」でした。一度本気で学び始めると楽しくなるので、相当なレベルに達するまで専門書を読みまくり、アンテナを立てて義歯の分野で著名な先生が書かれている記事をチェックしていました。その当時、これも間違いなく錯覚なのですが、もう学ばなければならない先生はいないと思い、次に歯内療法(歯の神経の治療)も極めたいと思いました。一度、極める方法を覚えるとあとは楽です。

①日本のトップを探し

②その先生に追いつけるようにセミナーに出て、関連する専門書、文献には手当たり次第に目を通し

③臨床に反映し

④シビアな目で自分の治療を評価する

⑤機会があれば講演、論文執筆などでアウトプットしていく

ということを繰り返せばよいのです。歯周治療、咬合治療、インプラント治療、審美歯科治療、咬合誘導・矯正治療、頭蓋・顔面・口腔咽頭治療、レーザー治療など多くの分野で、失礼な話ですが、トップの先生しか見ていません。若い先生方から「末竹先生が最も得意な分野は何ですか?」と質問されることがありますが、「本物を探す能力、いや嗅覚かな」とお答えしています(質問に対する答えではありませんが)。その分野で学ぶべき一等賞の先生を見つける能力は負ける気がしないなと自負しています。日本全国見わたせば、勉強量で私よりを大きく凌駕している先生はたくさんいらっしゃると思います。ただムダな、見せかけの、流行病の、患者さんのためにならない、歯科医師のマスターベーション的なことに、余計な労力を費やしてしまっていることを本当によく目にします(コンポジットレジンのグルーブステインを本当に患者さんが求めていますか?臨床上必要ですか?)。残念なことですが事実です。

では上記の方法であれば、どのような先生を目指しているか?代表的なところでは、総義歯は阿部二郎先生が提唱されている方法を忠実にコピーし、自分の咬合理論に従い噛み合わせの調整を行う。歯内治療は自分自身でセミナーを行っており、非常に結果が優れている方法を確立しているため、目指すべき先生はいらっしゃいません。インプラントは優ビル歯科の林揚春先生とお知り合いになり、何とか近いレベルでディスカッションができるようになりたいと思うことで現在のレベルになりました。また、一般的にはそれほど評価が高くなかったHAインプラントの素晴らしさを教えていただいた先生です。冷静に判断して世界で最も優れたインプラント臨床家でしょう。補足すべきはHAインプラントを低く評価されている先生は、例外なく、きちんと使われていない先生か(結果が出ずに、あれはダメだということになっています)、上っ面の勉強をされている先生であると思っているので最初から目指すべき先生のリストから大きく外れていることです。最後は以前のブログで登場されているひかり歯科の三谷寧先生です。三谷先生が提唱される頭蓋・顔面・口腔咽頭治療は遠い道のりになりますが、残りの歯科医人生をかけて後進に伝え、また当然患者さんにやって差し上げたい治療です。

このように目指すべき日本一がはっきりしていると非常に楽なのですが、ただ一つはっきりしないのが咬合治療です。全世界的に様々な先生が提唱される「○○法」、「○○式」という理論があって、私から見るとそれぞれに決め手に欠けるという感じです。謂わば「宗教」です。サムシング・グレートという絶対的な神のような存在は共通しているが、それぞれ少しづつ異なるので小さなものを含めると世界中にたくさんあるという宗教と咬合の分野は非常に似ているのです。この分野については本物を嗅ぎ分けきれていないので、『No.1』を見つけることが今後の課題です。