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まだ「生体不活性」のチタンインプラントにこだわりますか?

Posted by Suetake 2011年11月23日

本日は、予定を入れずにゆっくり 『HAインプラントインタビュー -時代を動かした大家たち-(クインテッセンス出版)』を読みました。石本先生が、インプラントの大家である、春日井昇平先生、山道信之先生、林揚春先生に質問する形の本です。

私自身、Zimmer Dental公認のインプラントインストラクターをさせていただいていますが、対談形式のこの本には、文語体では表現できないダイレクトな主張がちりばめられており、新たな発見、気づきがあってうれしく思いました。

林揚春先生は、今や誰もが認める世界最高峰のインプラントロジスト。私を今のレベルまで引き上げていただいた、偉大な師匠です。

インタビュアーの石本先生が林先生のインプラント補綴に関する考え、細かい配慮、その先にある患者さんの健康、Quality Of Lifeへのこだわりについて、うまく引き出されていました。

山道信之先生も知る人ぞ知るインプラントの大家。歯科医師の皆さんには

山道信之=骨造成

として知られているのではないかと思います。その山道先生が、本の中でいわれている一説をご紹介します。

「上顎には早期のオッセオインテグレーションの獲得を期待してチタン表面にHAをコーティングしたHAインプラントを使用しています。特に、上顎洞に造成した骨には有効であると考えています。‥‥‥‥‥
私は同時法、段階法の埋入時期も含めて、骨補填材料の種類、インプラントの種類別にデータを集めました。理由はあったのですが、同じ患者で片方はHAインプラントで、もう片方はチタンインプラントを何本か埋入することになったので、そのサバイバルレートの経過を観察したわけです。結果、埋入時期、骨補填材料の種類に関係なくHAインプラントの成績が抜群に良かったわけです。」

HAインプラントの欠点とは?という質問ももちろんありましたが、骨質がタイプ1の場合にHAのはがれる可能性があるということを言われているだけでした。その点についても、質の高い、スプラインMP-1を使用すればほとんど問題が起きませんので、チタンインプラントを使用する理由がありません。

では、まことしやかに語られている「HAインプラントのHA部分が口腔内に露出した場合に、一気にインテグレーションが破壊される」

ということが現実に起こることなのか?という点については、一昨年に、デンタルパワーで私が林先生と対談させていただいた(4回連載)最後に、林先生が言われた一言でけりがつきます。

「HAコーティング層のスレッドが口腔内に露出しているのに、まったく炎症を起こしていないというケースも見たことがあります。患者さんの良好なプラークコントロールのおかげということもありますが、これがどういうことなのかを考えてみてください。つまり高結晶率のHAインプラントの安定性を示すものであると考えられます。
いまだに、“HAは吸収が起きる”という臨床家の方もいますが、一方で同じ焼結体HAで骨補填材に使用するカルシタイトなどは生体内で吸収しないと言っています。これらの矛盾になぜ気がつかないのか不思議です。」

林先生と並ぶインプラントロジストの武田孝之先生が、チタンインプラントメインからHAインプラントをメインに使用するようになられたり、チタンインプラントのインストラクター陣が臨床では上顎にHAインプラントを応用しているという噂をたくさん聞くにつけ、もう生体不活性のチタンインプラントをあれこれこねくり回して無理矢理使用して、患者さんに苦労をかける時代でないことは確かです。

特に骨質が悪い日本人に、欧米の文献を持ってきて、「グローバルスタンダードのチタンインプラントを使用しないと」とのたまう意味の無い講義を聴くとがっかりすることもあります。

これから、インプラントを勉強しようと考えている先生方、多くのシステムについてお金をかけて勉強する必要はありません。日本人の顎骨に適しているHAインプラントについてのみ深く追求していってください。

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