第五回:インプラント考

歯科医療関係者でなくとも、「インプラント」という言葉を一度は聞かれたことがあるだろう。歯が失われたところに自分の歯の代わりになりうる「人工歯根」である。

  「インプラントは危険な治療」であるという見出しを一般の新聞でしばしば目にするが、この認識は、歯科界全体から見て払拭されてきたと思う。だからといって、簡単な治療になったかというと、そうではない。やはり高度な知識と技術が求められる。ただし、インプラントが日本の開業医の臨床に登場した当初と比較して、精度の高い治療が行うことができる下地ができている。何年か前のインプラント専門書を開いてみると、当時のインプラントは一目でそれとわかる、見た目の悪い、「ここにインプラントがありますよ」と訴えているような形態であったことがわかる。現在のインプラントは専門家が見てもレントゲンを確認しない限り、自分の歯と見分けがつかない。今は「審美」を語る場合、この治療は避けて通れない。

私がインプラント治療に取り組み始めて10年が経った。現在多くの患者さんにインプラント治療を行っているが、私がこの治療を勧めるのは「審美」とは別の理由がある。今の保険制度では1本歯を失った場合、通常『ブリッジ』という治療法を選択する。『ブリッジ』とは無くなった歯の両脇の2本を大きく削り、一体となった3本の金属をセメントで固定する治療である。(さまざまな種類の材料はあるが保険では奥歯は銀歯)

確固たる根拠(エビデンス)があるわけではないが、個人差はあっても「かみ合わせのズレ」が人間の健康に大きな害を及ぼすのは間違いない。このブリッジという治療、噛み合わせ治療の専門家からいっても、削る前よりもかみ合わせの高さが低くならないようにすること、スムーズな顎の運動を阻害しないように作ること・調整することは非常に難しい。さらにおわかりの通り、虫歯でもなんでもない健康な歯を無惨な状態にしなければならない。エナメル質という大事な「鎧」を大きく削り取らなければならないわけである。もし失われた歯と見た目も咬み心地も同じものがあればそれを勧めるのが歯科医師としての使命であろう。

  今「噛み合わせ治療」「顎関節症治療」「虫歯予防」は歯科界のトレンドである。これらを達成するためにはインプラント治療は避けて通れない。私は患者さんの健康のために予知性のあるインプラントを勧めたい。


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