第一回:夢はハッピーリタイアメント

院長 末竹和彦
よく人前で『夢』について語ることはある。「自分の夢」についてではなく、夢のとらえ方やそれを達成するプロセスについてである。では自分の夢は?

中学生時代に父(職業は食品製造業)の助言もあって歯科医師になることを目指し、実現できた。歯科医師になってから、特に長崎で開業してからは充実した歯科医人生を味わっていると思っている。スタッフと一緒に患者さんに精一杯の誠意と歯科医療サービスを尽くして、代わりに「すばらしい笑顔」とそれなりの報酬をいただけている。この限られた報酬の中でスムーズな医院経営を行うために、ドンブリ勘定ではなく、洗練された経営センスを必要とされる「厳冬の時代」がもうそこまで迫っているようである。現実問題としては、家族の生活のためにも「がんばって」あと数十年仕事を続けていくのだろう。
しかし、このように「生活のために働く」としても、私はあるひとつのことだけはライフワークとして日々の診療の芯に置きたいと思っている。

 実をいうと、歯科医師である私自身がかみ合わせの不具合によって体のあちらこちらに症状が出ているのである。一見すると正常な咬合状態でMKGを用いて検査してみても異常な値ではない。それなのに・・・。咬合紙の厚みの半分程度の調整を2、3ヶ所行うだけでリアルタイムで身体が反応する。「かみ合わせ」とは「敏感な人」にとってそれほど繊細なものなのである。「かみ合わせ」が原因で自分より厳しい症状を持つ患者さんを診るにつけ、少なくとも

かみ合わせを狂わせる治療をしないようにしよう。
安易に切削をしないようにしよう。
(ただ、挺出歯は抜髄をしてでも正常な咬合平面の位置まで切削する必要があります。)
アンテリアガイダンスのチェックをしよう。

と思う。 しかし、いったん悪くなったものは完全に元に戻るわけではない。そう考え、同じ【予防】でも『カリエス』ではなく『不正咬合』の予防がより重要であると自分の中で結論づけるに至った。

  現在、多くの子供たちが不正咬合の予防のための治療で当院に来院している。単に前後的に歯を並べるだけではよい顔立ちは得られないし、丈夫な体を育むことはできない。特にワイヤーによる前歯の舌側移動は急峻なアンテリアガイダンスとバーティカルディメンジョンのさらなる低下を招き、体全体不具合に直接結びつくことは紛れもない事実である。少なくとも当院を頼って来られる患者さんには、現在から将来にわたって不正咬合が原因でつらい人生を歩んでほしくない。そう考えて、スタンダードエッジワイズ、バイオプログレッシブ、シュワルツアブライアンス、サジタルアプライアンス、バイオネーター、ムーアプライアンス、ビムラーアプライアンス、3D装置、各種トレーナー、そして補綴など、装置に固執することなく患者さんによければ何でも行っているし、ある程度の結果は得られていると思っている。しかし『小児の成長』や『最終のツメ』を考えると勉強しなければならないことがまだまだ山ほどある。
常に患者さんのためを考え、咬合誘導、咬合治療、さらに咬合を悪くさせない治療を心がけながら一つひとつの診療を行っていきたい。そして、治療が終わったときに「最近何でもおいしく食べられるんですよ。」という言葉だけではなく「最近体の調子がよくなりました。」「お口を含めて健康そのものです。」といったことばに対して私が「よかったですね。私もうれしいです。」と答えるという会話を一つでも多くしたいと考えている。
哲学的な話になってしまうが、究極のところ人間は「人様のお役に立つために」生まれてくるものであろう。となれば、不正咬合を予防でき、不幸の種を少しでも取り除くことができる立場にある歯科医師とはなんとすばらしい職業だろうか、そして不正咬合と種々の病気(顎偏位症)の関係が少しずつ社会的に認知されるようになったこの時代に現役歯科医師として働ける私はなんと幸運な人間なのだろう。
私を支えてくれる皆に感謝をし、ハッピーリタイヤメントを迎えるまで精進をしていきたい。それが現在の私の描く「夢」である。


RSS feed for comments on this post. TrackBack URL

Sorry, the comment form is closed at this time.