上顎犬歯の位置異常にたいする処置法を考える その6
この連載も、いよいよ佳境に入ってきました。
[ 変化させるのは、そのパワーチェーンを引っかけるフック!
上げたり下げたり、前に出したり戻したり、遠心へ曲げたりできるフックを適切な長さで着脱式装置(当クリニックの場合バイオブロックステージ2)に組み込むことによって、口から取り出して細かい調整ができるのです。]
の続きからですね。
上顎犬歯が側切歯に引っかかっている場合もあるでしょうし、そうではないことも多くあります。
そのどちらにも対応するには、いきなり下方に引っ張るのではなく、
『 同じ高さで水平に引く 』
ということが重要。
自動的に下方へ引かないようにするにはどうすればいいでしょうか?
それは、フックの位置を根尖方向に長く設計すること。
正確に書けば、ブラケット(or ボタン等)と同じ高さまで下ろした形にすることです。
短すぎると、そうしたくなくても下へ引っ張ることになってしまうのは、最初の写真からわかっていただけるでしょう。
動線上に側切歯が存在する場合には、それを避けるように少し前方に出すようにしてから遠心方向に移動するように調整するという考えが必要ですが、固定式の装置を利用した場合には意外に苦労してしまうことが多いもの。
提示している着脱式装置を応用すれば、赤丸内の黄色矢印の距離を口腔外で調整することによって容易に目的を達せられます。
もちろんただ出すというのではなく、少し出すことができたと診断したら遠心に軽く牽引し始めることが必要ですし、フックを前に出す量が多い場合、唇側線を付けて上唇を圧排しておかなければ、唇の内側に傷ができてしまうことがあるということも考慮しておかなければなりません。
「固定式でないのであれば、パワーチェーンを誰がフックに掛けるんですか?」
という声が聞こえてきそうですね。
回答しておきます。
親御さんにやっていただきます。
パワーチェーンの伸ばし方がマイルドで、掛けるフックの形が大きくて歯肉から少し離れていれば、ピンセットを使ってもらうことで問題なくセットできているようで、今まで
「難しくてできません。」
と言われたことは皆無です。
全体を通してみると大変そうですが、基本を押さえさえすれば、それほど難しいことではありません。
私のように、
犬歯の状態によらず着脱式の装置を使いながら、ほぼ同じような方法で牽引を試みる
のか、アンカースクリューやフルブラケット治療を応用してケースバイケースで対応していくのか。
いずれにしても、成長発育期の小児における歯科矯正治療を行うのであれば、
上顎犬歯の牽引というものを避けて通ることはできない
と思ってください。
鼻上顎複合体が右矢印のように回転と内側へのひずみを伴いながら下がっているお子さんだらけ( ガミースマイルの子どもたちばっかりでしょう? )の今日、
上顎犬歯の埋伏は起こるべくして起きている、と言っていいはずですから。
上顎犬歯の位置異常にたいする処置法を考える 最終回 につづく
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