上顎犬歯の位置異常にたいする処置法を考える その2
上顎犬歯の萌出障害、歯胚の位置異常・方向異常について理解しておきたいこととして、
・どのレベルの位置異常であれば経過観察可能か。
・いつ対処すべきか。
・対処が遅れた場合にどのようなことが起こるのか。
・対処の方法は。
・対処の違いによりどのような結果の違いが起こる可能性があるか。
といったことが挙げられますが、唇側歯肉・骨の開窓+牽引ということをあまり行ったことがない、あるいは全くやったことがないという歯科医師がまず知りたいのは、
●どのレベルの位置異常であれば経過観察可能か。
と
●対処が遅れた場合にどのようなことが起こるのか。
いうことではないでしょうか。
「できることならば、荒っぽい技は使いたくない。」「慣れないことはやりたくない。」
と考えるのは致し方ないことですし、知識や経験がなければ、
「何もしなくても自ら方向修正してくれるのでは?修正してくれないかな~。」
という希望的観測のもと、根拠のない
「様子を見ましょう。」
という悪い意味での伝家の宝刀を抜いてしまうことになるだろうと容易に想像できます。
歯冠が直接接しているわけではなく、はっきりとした濾胞性歯嚢胞が主な原因と思われる症例ではありますが、側切歯の歯根吸収が起こり始めて、慌てて引っ張り上げたというのが下のレントゲン写真です。
生理的動揺内で、機能にも何とか許容範囲内の吸収でおさめることができたのではとホッと胸をなでおろしたという症例でもあります。
このような苦い経験や他多くの症例を扱ってきて、X線写真・CT画像での上顎犬歯周辺の異常所見がすぐに目に飛び込んでくるようになってきているが故に、
外科処置を伴う牽引処置が必要か、牽引を見送るべきかという、
確率の高い指標
というものがどうしても必要になると感じているのですが、前回記したように、
EricsonらによるSECTOR分類
くらいしか目ぼしいものは見つからないというのが現状なのです。
それでは、次のCT画像を見てください。
上顎左右犬歯は、牽引を行う必要がありますか?それとも経過観察をすべきで、期待する位置に萌出する可能性が残されているでしょうか?
上顎犬歯の位置異常にたいする処置法を考える その3に続く
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