上顎犬歯の位置異常にたいする処置法を考える その3
前回ブログの回答の前に、別のケースを見ていただきましょう。
術前の5枚法口腔内写真とパノラマX線写真です。
上顎左右犬歯を見ると、捻転している側切歯に重なっていて、窮屈な状態で骨内に収まっています。
しかしこのX線写真から、
「もしかしたら開窓・牽引を行わなければならないかもしれない。どうしよう。」
と心配する人はあまりいないでしょう。
なぜか?
中顔面の回転を伴う過度の垂直成長によって上顎が歪んでしまっていて、
舌 房
として不適切な口蓋の形になってしまっています。
この部分からスタートしたバイオブロック療法により治療を進めていき、
「バイオブロック療法の肝」といえるステージ3を入れて6ヶ月ほど経過した口腔内 ( 切歯骨領域が伸びたきれいな舌の受け皿としての口蓋形態に注目してください )、そしてパノラマです。
当たり前のように、上顎犬歯が期待する位置に萌出しようとしているのが見て取れます。
それと同時に、乳犬歯がきれいな形で吸収してきているのがおわかりになるはずです。
そうなのです。
永久歯にとって代わられるべき乳歯の歯根吸収が
永久歯の水先案内人
の役割を果たしていると考えられるのです。
それでは、さらに別のケースを。
ここでは、3つのパノラマX線写真とCT画像を見ていただきましょう。
前症例と同様にバイオブロック療法による治療を行っているところで、上から治療前、治療中(ステージ3前)、ステージ3を入れて3ヶ月後です。
ステージ3装着前のX線写真を注意深く読像しなければ、
「左上犬歯はいやな位置に来てしまったな。側切歯の歯根に長く接すると吸収させてしまう危険性があるから牽引しなければならないかもしれない・・・」
となってしまうでしょう。
もし、
【犬歯の歯冠がわずかにでも乳犬歯に接していれば、あるいはごく近くに歯根吸収を起こし始めている乳犬歯が存在すれば、方向を修正する可能性がある。】
という仮説を立てて、十分それを検証していれば、下段のX線像になることを予想して経過観察を行うことになります。
この仮説のバックボーンとなるべき、
『乳歯の歯根吸収に伴って永久歯を導く物質を萌出する』
という内容の論文、あるいは仮説そのままの論文を探してみたのですが、残念ながら見つけることができませんでした。
不勉強ゆえ、もしそれらしいものがありましたら紹介していただきたいと思います。
それでは前回ブログの回答です。
右上犬歯・・術前の状態で乳犬歯歯根と犬歯歯冠が完全にすれ違っていたので開窓・牽引が必要
左上犬歯・・術前の状態で乳犬歯歯根と犬歯歯冠が接していたので乳犬歯の歯根吸収が始まる可能性あり。よって経過観察
となり、初診時に同じSECTOR3に位置していた(前回ブログ参照)ものの診断が異なり、左上に関しては、何をしたわけではありませんが、期待通りの位置に萌出してくれました。
上顎犬歯の位置異常にたいする処置法を考える その4につづく
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