• カテゴリー

  • 最近の投稿

  • 月別アーカイブ

  • 検索

にほんブログ村 病気ブログ 歯科医へ

上顎犬歯の位置異常にたいする処置法を考える その5

Posted by Suetake 2020年2月4日

『上顎犬歯の位置異常にたいする処置法を考える 』もその5に入りましたが、ついてきてもらっているでしょうか?(笑)

確認のしようがないので、淡々と説明していきたいと思います。

 

初診時より左右上顎犬歯の位置異常が大きかった症例です。



見ておわかりのとおり、上顎犬歯歯冠と乳犬歯歯根がすれ違っていますので、経過観察をしてもやはりよくなることはありません。

手をこまねいていても、側切歯歯根吸収の可能性が高まるだけですので、

私が考える方法にて左右同時に牽引をし、永久歯列が完成しました。





私が考えている用いるべき手法とは?

まず十分なスペースを確保した上で、導くべき場所にある乳犬歯の抜歯をします。

歯肉の開窓、場合によってはこつの開削も行って犬歯唇面の半分程度が見えるようにして、長めのパワーチェーンをあらかじめ付けたブラケットをスーパーボンドにて接着をします。

ここでポイントとなるのが、

開窓後の確実な止血

なのですが、細かい注意点などありますので、長崎バイオブロックセミナー時か、商業誌に投稿することがあれば詳しく述べたいと思います。

パワーチェーンをフックする固定源ですが、

着脱式の装置

が絶対にいい!!

なぜなら、牽引の方向を3次元的に、しかも容易に調整できるからです。

立体的な牽引を考慮しなければならないのはなぜか?

 

次のレントゲン写真を見てください。



何度かCT画像を載せている、左側は自然に正しい位置に犬歯が萌出してくれたという症例です。

右上犬歯は側切歯に重なる形で乳犬歯とすれ違っていましたので、その乳犬歯を抜歯したのちバイオブロックスステージ2という装置にパワーチェーンをフックする形で牽引を開始しました。

犬歯歯冠周囲に骨が被っていても、特に問題がなければ、牽引をし始めればすぐに遠心に移動し始めるのがわかるのですが、想定していたとおりに動きません。

全く動かないのではなく、側切歯の歯根を遠心に引きずるような形になってしまい、その結果、口腔内では歯冠が近心に傾斜してしまいました。




CT画像を注意深く再度検証したところ、側切歯の近心に歯冠が引っかかるような形になっていて、動かしたい方向、動線の途中に側切歯歯根が邪魔をするように位置しているのが確認できました。

そうであれば、まずはその引っかかりをとることから始めなければなりません。

上方や遠心方向に引っ張るのではなく、若干前方へ、下図のように前に出しながら遠心に動かすというイメージで牽引をスタートするべきだったのです。





上記方法で行った結果、すんなりと動いてくれ、主な治療ターゲットを下顎左右中切歯先天性欠如部分に移すことができました。

上顎犬歯とつなげたパワーチェーン(リガッチャワイヤーを使われる先生もいらっやるでしょう)を工夫したところで、この3次元的な動きをさせることは不可能です。

変化させるのは、そのパワーチェーンを引っかけるフック!

上げたり下げたり、前に出したり戻したり、遠心へ曲げたりできるフックを適切な長さで着脱式装置(当クリニックの場合バイオブロックステージ2)に組み込むことによって、

口から取り出して細かい調整ができる

のです。

 

上顎犬歯の位置異常にたいする処置法を考える その6につづく

 

お時間があるときに、応援クリックお願いします。