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上顎犬歯の位置異常にたいする処置法を考える 最終回

Posted by Suetake 2020年2月9日

『上顎犬歯の位置異常にたいする処置法を考える』という内容のブログも、やっと最終回にたどり着くことができました。


最終回は、わかりやすいようにポイントを箇条書きにしたいと思います。

 

■成長発育期の矯正治療を妨げる【 2つの大きな壁 】がある。一つは、大がかりな調査で約10人に1人の確率だとわかっている永久歯の先天性欠如、もう一つが萌出障害(萌出遅延、位置異常、方向異常、埋伏歯等)である。

■不正咬合を訴えて来院される患者の中で中顔面の前方成長が著しく不良な場合、埋伏している上顎犬歯の極端な位置異常に遭遇する割合が高くなる。

■外科処置を伴う牽引処置が必要か、牽引を見送るべきかという、確率の高い指標が必要になるが、EricsonらによるSECTOR分類くらいしか目ぼしいものは見つからないというのが現状である。

■どのレベルの位置異常であれば経過観察可能か → 根管治療が施されていない乳犬歯の歯根に犬歯歯冠が接している、既に乳犬歯歯根の吸収がある場合。SECTOR分類2以内、3の場合でも条件に合えば萌出方向が修正される可能性がある。

■いつ対処すべきか → 定期的にX線写真撮影していない場合、上顎第1小臼歯が萌出したときに乳犬歯の動揺度が未だ生理的な範囲以内であれば、犬歯の位置異常を疑う必要がありパノラマX線写真やCTによる検査が必要である。その結果、乳犬歯歯根と骨内の犬歯歯冠がすれ違っていれば乳犬歯歯根の吸収が起こる確率が低く、その方向に誘導されることも期待しづらい。牽引のための十分なスペースを確保されているのであれば、速やかに牽引を始める。

 



■対処が遅れた場合にどのようなことが起こるのか → 長期間、隣接する永久歯歯根に犬歯歯冠が接していれば、歯根の異常吸収を起こす可能性が高まり、吸収が進めば抜歯に至ることもある。

■対処の方法は → フルブラケット治療やアンカースクリューを応用する方法、バイオブロック装置の中に牽引用のフックを組み込む方法などがある。

■対処の違いによりどのような結果の違いが起こる可能性があるか → 直線的、2次元的な牽引方法の場合、側切歯歯根と犬歯歯冠の関係によってはイメージ通りに牽引が進まなかったり、側切歯の歯根ごと遠心に動かしてしまうこともある。
3次元的に動かすことを前提に装置設計を行い、どのようなケースにでも問題なく対処できるようにしておくことが重要である。そのためには、フックを歯根方向に長く伸ばして純粋な水平方向へ牽引もできるようにしておく。
また、着脱式の装置を応用する場合、固定源として歯と装置が一体化して動かないことが必要、つまり、クラスプが単純鉤やアダムスクラスプ程度ではその役割は果たせないということである。
バイオブロック装置で採用されている、クローザットクラスプによる維持が推奨される。

 

動線上に側切歯などの永久歯があるのかどうかを診断するためには、パノラマX線写真では不十分であることはいうまでもありません。

自院、あるいは他院に依頼してCT画像を得、慎重に動かす方向を決定するようにしましょう。

 

今回は、

・開窓の方法

・ポイントとなるその後の止血

・乳犬歯に根管治療が施されている場合に起こりうること

・埋伏歯の萌出を促す効果的な歯肉開窓方法

などについて言及することができませんでした。

1年以内にはブログで書いてみようと思っていますので、今後もたまにのぞいてみてください。

 

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